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#01 湖魚を食べる会
魚料理の風雲児、湖魚の先入観をくつがえす

「さしみの魚紳」店主 牧野広明

この連載は、「湖魚でなんか楽しいことやろうぜ!」のかけ声で始まった、『まな板の上の湖魚〜湖魚を食べる会〜』のレポートです。年1回のペースで開催しています。
毎回、漁師のぼくもびっくりな料理が登場します。 「湖魚って食べられるの?それっておいしいの?」という方や、 これから湖魚を食べてみようという方の参考になればうれしいです。

『まな板の上の湖魚〜湖魚を食べる会〜』はここから始まった。

記念すべき第一回目の舞台となった「さしみの魚紳」は、京都の繁華街河原町にある天然魚専門の居酒屋で、時々魚を納めています。素材のもつ本当の味をできるだけそのまま味わってほしいと、大将の牧野さんは手間や技を惜しみません。

ある日、「場とコトLAB」代表の中脇さんが「うまい魚を食わせろっ」と言うので連れて行くと、大将が気を利かせて鮒やブラックバスを刺身やフライや寿司にしてくれました。

(牧野) 湖魚は美味しい。海の魚と分ける必要なんてない。

その言葉どおり、店のカウンターには海魚と湖魚が仲良く肩を並べています。すっかり意気投合した僕たち。

(中脇) 湖魚を食べる会、してみる?
(ぼく) 食べた魚の名前を当ててもらおう!
(牧野) 琵琶湖の魚をウマイ!って言わしたる!

といった具合に、「まな板の上の湖魚」の開催はあれよあれよと決まっていきました。

中脇さんのFBより。「ミーティング後の飲み!中村くんも卸している琵琶湖の魚を食べられる魚紳さんへ。 大将のこだわりが面白い! ここで、なんかしたいぞ!したいぞ! ひょー。今日は飲みまくる!」

湖魚の固定概念をくつがえす

さあ、イベント当日です!その朝、牧野さんに獲れたての魚を届けて、夜のメニューを考えてもらいました。何が出てくるかは、僕も知りません。

店内は、滋賀・京都・大阪から参加してくれた人たちの熱気でムンムン。およそ初体験の料理に、みんなの期待が高まります。

では、出てきた料理を紹介しましょう。

1.お造り

イワトコナマズ(左)とブラックバス(右)のお造り

ほんのりピンクでおいしそう。何も言わずに出されて淡水魚と気づく人が一体どのくらいいるだろう。

(牧野) なんの魚だと思いますか?左がイワトコナマズ、右がブラックバスです。

「えー!ナマズを食べられるの?!ブラックバスをお造りで?!」
といった声も聞こえてきそうです。

イワトコナマズは漢字で書くと「岩床鯰」。その名の通り、湖底の岩場に生息するナマズです。漁獲が少なく、ほとんど流通しません。けど、食べてもらうと間違いなく「うまい!」と言ってもらえる魚です。

ブラックバスは、外来魚で琵琶湖では駆除対象の魚です。駆除された魚は、肥料などに加工されます。けれど、ちゃんと料理すればうまいんです。

2.鮒と鯉のたまご煮

鮒は鯉の仲間ですから、従兄弟煮とでもいうべきでしょうか?醤油で甘辛く炊かれています。

鮒と鯉のたまご煮

ごはんのお供にも良さそう。

3.鯉のあらい酢味噌和え

「あらい」とは刺身を冷水や氷で〆て、コリコリとした食感をたのしむ料理です。琵琶湖の周辺では、むかしから鮒や鯉をあらいにして酢味噌和えで食べる習慣があります。

鯉のあらい酢味噌和え

引き締まった身がコリコリしていてうまい。

4.ブラックバス鍋

ブラックバスの切り身

一瞬、タラかなにかの白身魚に見える。

(牧野) これもブラックバスですよ。

これには一同騒然。ぼくも驚きました。なかには臭いを確かめる人も。

皮に生臭みがあるといわれるブラックバスですが、新鮮な素材を腕のたしかな料理人がさばけば何の問題もないことがわかりました。

鍋になったブラックバスは、身がふっくらしている

昆布出汁の「チリ鍋」。鍋になったブラックバスは、身がふっくらしている。シンプルにポン酢で頂く。

5.ギンブナのタタキ

皮目が香ばしく焼かれていました。薬味と一緒に。

ギンブナのタタキ

鮒寿しで珍重されるのは、琵琶湖の固有種ニゴロブナ。ギンブナはニゴロブナより安く取引されますが、ぼくは刺身で食べるなら断然ギンブナ派。

見たことない料理の数々に、すでに胸がいっぱいです。

〜ニゴイの骨切りパフォーマンス!〜

お腹が満たされつつあるなか、ここで余興がはじまりました。ニゴイの骨切りパフォーマンス!

ニゴイは見た目が鯉に似た魚で「似鯉」と書きます。白身でおいしいのに、小骨が多いので調理しづらく困っていましたが、「ハモのように骨切りすれば大丈夫」と大将が教えてくれました。

「実際に調理するところを見たほうが、身近に感じてもらえるのでは?」という中脇さんの提案で、みなさんの前でパフォーマンスしていただけることに。カメラが一斉に大将に向けられます。

ニゴイの骨切りパフォーマンス!

まずはニゴイを3枚におろすところから(うろこと内臓はあらかじめ処理してあります)。

6.ニゴイの湯引き 梅肉和え

骨切りされたニゴイは、湯引きしてハモのように梅肉でいただきました。

ニゴイの湯引き 梅肉和え

骨切りされて食べやすい。淡白だがうまい。

7.ニゴイの天ぷら

残りは天ぷら、抹茶塩とともに。

ニゴイの天ぷら

料理もいよいよ終盤です。

8.鯉の塩焼き

鯉も、大将の手にかかればシンプルな塩焼きに。

鮒の塩焼き

皮ごとパリパリうまい。

9.イワトコナマズのえんがわ すっぽん風スープ

イワトコナマズの旨みが、スープになって染み渡る。

イワトコナマズのえんがわ すっぽん風スープ

お餅も入ってました。

さあ、これですべての料理が出揃いました。
刺し身、塩焼き、湯引き、鍋は昆布出汁の「チリ鍋」。「淡水魚=臭い」のイメージを壊したいという大将の計らいで、どれも魚の味や香りが一番分かりやすいシンプルな食べ方のみでしたが、琵琶湖のさかなをアテに、おのずと滋賀の地酒を注文する人が多く、思い思いに写真を撮ったり舌鼓を打ちながら、楽しんでいただけたようです。

おいしい魚、おいしい酒、楽しい時間。イベントを終えて

右がこのイベントを企画してくれた中脇さん

右がこのイベントを企画してくれた中脇さん

イベントに参加して下さった皆様、楽しい時間を本当にありがとうございました!!

おいしい魚。
おいしいお酒。
楽しいメンバーと過ごす楽しい時間。
僕にとって最高に楽しい時間でした!!

魚を色々見てきたつもりではいましたが、驚きの連続でした。
じつは今回、琵琶湖産の「未利用魚、低利用魚」をあえて選びました。
市場に流通することがほとんどない淡水魚でも、新鮮なうちに腕の確かな料理人の手に掛かれば、驚くほど美味しい料理になることを、魚紳の大将は証明してくれました。

ワザワザどこの海から運ばれて来たのか分からない、いつ水揚げされた魚か分からない魚を買わなくても、目の前に漁港があり漁師が漁に出てるんです。しかも美味しく食べれます。

僕の魚やから美味しかったなんて事はありません。捕まえる作業は琵琶湖じゅう一緒。
またどこかで琵琶湖の魚を食べてもらえれば、今回の会の意義があったのかなと思います。
ぜひ、これからも琵琶湖の魚をよろしくお願いします!!

SHOP DATA

さしみの魚紳

〒604-8032 京都市中京区河原町三条下ル
4筋目BALビル東入ル クラリオンビル1F

TEL:075-212-8661

WEBサイト:http://osashimi.com

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