夏の土用にマイ鮒寿し作りませんか?
春の琵琶湖はいろいろな魚が獲れますが、滋賀の食文化で代表される鮒寿しの材料ニゴロブナが、卵をはらむのもこの時期です。ニゴロブナのウロコと内臓を取り出し、数カ月塩漬けにしたのが塩切り鮒です。夏の土用の頃、磨いてご飯と漬け込むと鮒寿しになります。
よく肥えたニゴロブナ! 地域によっては、魚体が丸々しているので「まる」と呼んだり、鮒寿しに使う魚のためか「飯魚」と呼んだりするそうです。
鮒寿しといえば「くさいもの」の代名詞のように言われますが、魚を獲ってから処理するまでの時間や塩の量などによって、臭くなるものとそうでないものに違いがあるように思います。
魚がまだ生きているうちに、ちゃんと血抜きができているかどうか。しっかり塩して余分な血が抜けているか…。これができている魚と、そうでない魚で風味がちがってくるのは当然です。中村水産の塩切は前者です。しっかり腹の中まで塩して、魚の旨味を引き出しています。
鮒寿しは、熟成が進むとアミノ酸量が増えて、旨味がのってきます。桶からあげたての鮒寿しは旨味が凝縮していて、とても良い香りがします。
街なかでも、あまり匂わない漬け方をご紹介します。ご自宅でマイ鮒寿しに挑戦してみてはいかがでしょうか?
鮒寿し作りの流れ
鮒寿しの作りかたは地域や家庭によって様々ですが、おおまかな流れは次のとおりです。
1.塩漬けされた鮒を磨く
2.乾燥
3.磨いた鮒をごはんに漬ける「飯(いい)漬け」
4.約半年寝かせる
必要な材料・道具
・塩切鮒(鮮魚換算で5KGが漬けやすいです)
・亀の子たわし または 真鍮たわし
・バット(磨いた鮒を立てかけます)
・冷やごはん3升5合
・桶(30号が最適です)
・平縄
・漬物用ビニール2枚
・重石30KG
・流水
それでは詳しく見ていきましょう。
1.塩漬けされた鮒を磨く
塩切り鮒はウロコがほとんど取ってある状態ですが、ヒレのまわりにウロコの取り残しや、表面に薄皮やヌメリがあるので取り除きます。これを「磨く」といいます。まったく磨かない地域もありますが、なるべく磨いたほうが初めて食べる人にも食べやすい鮒寿しになると言われています。
(1)エラの内側と顎の裏を磨く
付着している塩を磨き砂代わりに、エラ蓋の内側と顎の裏を親指の腹でこする。ヌメリをとり、エラ蓋が透き通るまで磨く。
(2)上顎の膜を取り除く
エラから小指または人指しを入れ、頭蓋骨を口の方へ沿わせると、上顎に膜があるので取り除く。取らなくても味に影響はないが、取ったほうが後でご飯を詰めやすい。
(3)たわしで体をこする
左手で頭を押さえ、真鍮たわし又は亀の子たわしで、頭から尾の方向にこする。背びれと胸びれに棘があるので注意。背中とお腹もこする。ヒレの付け根にウロコが残っていることがあるので取り除く。
磨く際に水をかけすぎると、魚がふやけて皮がめくれる原因となるので、あまりジャブジャブ水につけないこと。両面磨く。
(4)頭を磨く
頭もきれいに両面磨く。
(5)体内の塩や臓物を取り除く
お腹の中の塩を水ですすぎとる。塩の塊や心臓など臓物の残りが入っていることがあるので、指を入れて取り除く。卵(オレンジ色)まで取ってしまわないように注意。
(6)バットに立てかける
きれいになったら、口を下にしてバットに立てかける。
2.乾燥
塩切鮒は塩で脱水してありますが、磨くときに水を吸収してしまうので、1時間〜数時間乾燥します。なるべく水分を切ったほうが、うまく発酵すると言われています。
3.磨いた鮒をごはんに漬ける「飯(いい)漬け」
ごはんで鮒を漬け込みます。乳酸菌を増やすための作業です。
(1)桶を準備する
桶の内蓋を取り出し、底にビニールを2重に敷く。余った部分は外側に折り返す。
(2)手水(酒)を用意し、手を湿らせる
日本酒で手を湿らせます。日本酒の種類は問いませんが、こだわってみても面白いかも知れません。
(3)頭にご飯を詰める
エラから、ご飯(※)を詰めていく。頭の中に空洞が残ると、うまく発酵が進まないばかりか、乳酸菌以外の菌が増える原因となるので、口からご飯が溢れるまでしっかり詰める。ちゃんと発酵が進めば、頭もおいしく食べられる。
※ご飯は、熱いと身が煮えてしまうので、人肌より冷めているものが良い。
ご飯は35合必要(一般的な家庭の5合炊きなら7回分。炊くだけで7時間はかかる)なので、前日に用意することをお勧めします。
(4)お腹にご飯を詰める
お腹と喉元の空洞にご飯を詰める。詰めようと思えば皮が伸びていくらでも入り、卵が後ろに寄ったり、最後にご飯が足りない悲劇が起こるので注意。少しお腹がふくらむ程度でよい。
(5)桶にご飯と鮒を層状に漬ける
桶の底に厚さ2cmになるよう、ご飯を敷き詰める。鮒を5匹、頭と尾の向きを交互に並べる。鮒同士が重なる場合は、間にご飯を挟む。上からご飯をギュッギュと敷き詰める。2段目は、1段目の魚と直角(十字)になるよう並べ、またご飯を乗せる。頭の下に空間ができやすいので、そこもしっかりごはんを敷く。これを15匹なら5匹ずつで3段。
(6)桶に蓋をして重石を乗せる
ビニールを内側に折り込み、極力隙間ができないよう、ぴったり蓋をする。
桶の縁にそって平縄を置き、桶の内蓋、重石(10〜15KG)の順で乗せる。匂いや虫が気になる人は上からビニール袋を被せロープで締めると良い。
(7)数日後、残りの重石を乗せる
合計30KGになるよう、重石を乗せます。
4.約半年寝かせる
乳酸菌は35〜38度が一番増えやすいと言われています。軒下、ガレージ、土間、ベランダなどが良いでしょう。
カビもはえますが、乳酸菌が増えると菌が出す酸で乳酸菌以外生きられなくなります。気持ち悪いからといって開けないようにしてください。
漬けて約半年後から食べられますが、発酵の進みが遅いと骨や皮がまだ硬いことがあります。そのときは、鮒をご飯に戻して更に半年ほど寝かしてください。最短半年、長くて2〜3年楽しめます。重石はしておくこと。
1匹食べてみておいしければ、全て桶から出して、1匹ずつご飯に包まれた状態(空気をしっかり抜いた状態)でラップして、冷凍すれば1年くらい保存できます。もちろん、面倒でなければ1匹ずつ桶から出して、熟成具合を愉しむのもありだと思います。
飯(いい)の活用方法
鮒寿しを作ると、「飯(いい)」と呼ばれる発酵したお米が大量にできます。ゴルフボール大に丸めてラップして冷凍すると一食ずつ楽しめます。表面はカビていることがほとんどですので、2段目より下をお使いください。飯には乳酸菌がたっぷり。ぜひ活用してみてください!
・醤油をちょんと垂らして、そのままお酒のアテに
・大葉やニンニクや塩昆布と一緒に刻みこむと、「なめろう」のようなおつまみに
・ドレッシングの酸味に
・コロッケに練り込む
・クリームチーズの代わりにお菓子の材料として
鮒寿しの作りかた講習会